ミニマリストになるためのたった3つの方法

 最近よく耳にするようになった「ミニマリスト」

 モノを極限まで減らして生活をする人達の事だ。とにかく最低限の生活必需品以外を身の回りから徹底的に排除する。最近物珍しそうにテレビで特集が組まれているので、ご存知の方も多いだろう。ガランとした何もない部屋の中央で小さな御膳に置かれたご飯を食べる姿は、物のあふれた普通の生活をする人間にとっては、修行僧のようであり、若干滑稽な感じさえする。寂しさを感じる人もいるだろう。

f:id:yourstation:20160106222510j:plain

    高度経済成長を遂げバブルまで突き進んだ私達は、とにかく消費し続ける事で、満足を得てきた。戦争のない時代に、技術革新は消費者のもっと欲しいという思いがエンジンとなる。国民がまだ貧しかった時代はそれはものすごいパワーを産み、モーレツ社員によって日本中が物で満たされた。そして泡がはじけ飛んで、我に返る。もうこれ以上必要ないんじゃないか? 私達は立ち止まって考え始めてしまった。

 それでも消費がなければ経済は回らない。広告はあの手この手で消費を煽り、立ち止まって考え込んでいる私達の気を引こうと必死になった。しかし、一度気づいてしまったら、登って登って、転げ落ちた背中にそびえているあのバブルの山が、ただの幻想であるという事実から目をそらす事はできなくなっていた。物は売れず、商品価格は下がった。その間もテレビの画質は格段にあがり、記憶媒体もどんどん小さくなり、およそ携帯できない細長い弁当箱のようだった「移動電話」も、超高性能コンパクトPCになった。
 だが、心の中にぽっかりと開いた穴は、どれだけ鼓舞されようとふさがらない。あの時代の狂奔の空虚さを思い出すと、あそこに戻りたいとは思わなくなった。あの時代をくぐってきた世代がそう考える一方で、あの時代の馬鹿騒ぎをしらず、不景気にどんよりと沈んだ日本で生まれ育った世代は、初めから今ある物で満足をしていた。初めからあって満たされているのだから当たり前だ。消費への意欲は、何もないという状態からしか生まれない。iPhoneの4が5になっても6になっても、モノが買えなかった時代にカラーテレビを手に入れた時の、あの興奮を味わうことはできない。若者の○○離れ という言葉があらゆる物に波及していく。バブル世代まで高額消費の代表だった自動車も、全く若者の心を捉えなくなった。移動する手段にお金をかける事自体が、バカバカしい行為に成り果ててしまった。

 モノを持つ事に喜びを見いだせなくなった私達は、逆にそのモノから発せられる雑音が気になり始めた。いつも視界に入ってくる雑然とした室内。クロゼットの中を支配する混沌、どうせもう見ないとわかっているのに、部屋の一角を占領している録りためたDVDの山・・・自分の生活を振り返ってみると、必要としているものなど部屋にある物のうちのほんの1割程度じゃないのか? それ以外はただ部屋を狭く、窮屈にしているだけじゃないのか? そう頭をよぎり始めた時「捨てる技術」という本がバカ売れした。そしてその手のHow to本は周期的にブームになった。記憶に新しいところでは断捨離だ。ちょっと仏教的な(仏舎利からの連想か)精神論も感じさせるこの語感もあって、大ブームとなる。私の知人もおまじないのように「ダンシャリダンシャリ・・」と言っていた。

 そして、ここにきて実践者が脚光を浴びることになる。 それがミニマリストだ。

 ミニマル+イスト でミニマリスト。 ミニマルというと、音楽好きの人はスティーブ・ライヒなどに代表される「ミニマル・ミュージック」を思い出すかもしれない。同じパターンを繰り返しながら少しずつ変化していく実験的なジャンルだ。宮﨑駿作品の音楽担当久石譲が若い頃影響を受けて関わっていたジャンルとしても知られている。

Music for 18 Musicians

Music for 18 Musicians

  • アーティスト: Richard Cohen,Virgil Blackwell,Steve Reich,David Van Tieghem,James Preiss,Jay Clayton,Larry Karush
  • 出版社/メーカー: Ecm Records
  • 発売日: 2000/04/18
  • メディア: CD
  • 購入: 5人 クリック: 25回
  • この商品を含むブログ (28件) を見る
 

  これは1960年代のアメリカに登場した「ミニマリズム」という芸術分野の創作理論の音楽上の実践であり、美術分野ではミニマル・アート、建築ではミニマル・アーキテクチュアが一分野として存在した。

Minimalism DesignSource

Minimalism DesignSource

 

  最小限(minimal)主義(ism)と訳され、表現方法として、必要最小限を目指す手法である。装飾的な要素を最小限に切り詰め、徹底的にシンプルなフォルムを特徴としている。そういう意味では、今話題になっているミニマリストもこの主義に基づいた行動を取っていると言える。さしずめ ミニマル・ライフスタイルというところだろうか。

 物がない暮らし。物が持てないのでなく、あえて持たない暮らし。現代日本に新しく現れたこの考え方は、物に支配され切った私達をはっとさせた。物から開放された空間で、本当に必要なものだけと暮らす。持っているものは自分の人生に必要なものだけ。ある意味究極の贅沢だ。しかし実践となると、ハードルは限りなく高い。それでもやってみたいと思う方は、次にあげるたった3つの方法を着実に実行すれば、実現できるだろう。


1.朝から夜寝るまでに、今現在(過去3ヶ月以内)使用している物の一覧を作る。

 あくまで今現在だ。少し前まで使っていたが、今は全く電気を入れていない家電〈季節性のものは除く)は入れてはいけない。3ヶ月使用しないという事は、あなたにとって重要ではないからだ。いずれ使うかもしれないと思うものに電気を通す機会はまずない。枕も布団も、普通の人間なら一晩で一式以上使っていることはないだろう。来客用のものとして押入れに入っているものは数に入れてはいけない。ミニマリストになるには、他者と距離を置くことも覚悟しなければならない。ただこれも3ヶ月ルールを適用する。現在から前後3ヶ月以内に1度以上泊まる事を前提に来る客人は、あなたの人生にとって必要な人だ。その人用の物は除外する必要はない。

 枕カバーやシーツなどは、どの程度の頻度で換えるか個人差があるが、自分が気持ち悪く感じない程度の日数から、ひと月に必要な数量を確認する。サラリーマンなら必要最低限のスーツとワイシャツ、肌着の枚数は洗濯してローテーションできる最低限の枚数。休みの日は部屋着と外出着が最低何枚必要か。食器も、その日の最後に洗ってしまえば次の日使えるのだから、原則一揃えでいい。家での食事のパターンを分析し、必要な食器の枚数を書き出す。

 思い出の品などどうしても捨てられないものは、デジタル化できるものは極力デジタル化する。ミニマリストを目指す時一番壁になるのが、この「思い出の品をどうするか?」という問題だ。特にそれが、「おばあちゃんに買ってもらったピアノ」みたいな品になると、困り果てるだろう。今もそれを使用して自分の幸福にとって必要不可欠ならば、処分する必要はない。ミニマリズムはあくまで無駄をなくすのが目的であって、無駄でないものにまで切り込む事ではないからだ。しかしもし使用せず、ただの物置になっていたり、大きなオブジェと化しているのであれば、やはりここは処分以外の選択肢はない。まずその品を写真に撮り思い出のデジタルアルバムに収めた後処分するのだが、どうしても抵抗があるようなら、その品物が誰かの役に立った事が実感できるような処分の仕方をするといい。ここで例にあげたピアノであれば、お子さんがピアノを欲しがっている親しい友人などがいれば譲るという手もあるし、ピアノ譲ります/ 譲ってください というような掲示板もあるので、この人なら譲った後、ピアノも喜んでくれるだろうと思える相手にお譲りするというのも手だ。手元に置いておけばただの飾り物だが、譲ったことで、もしかしたら未来のピアニストを育てる為の手助けになるかもしれない・・・。そう思えば、いただいた人に対する申し訳ないという気持ちを和らげることができる。

 さあ、一覧はできただろうか。そこに記されているものが、あなたの人生のために必要十分な物だ。

 

2.「ミニマリストになる日」を設定し、書きだした以外の物をすべて処分する。

 それができりゃ苦労はねえよ・・という内なる声は無視する。これができなければ、ミニマリストにはなれない。大事なのは、期限を決めることだ。「ミニマリストになる日」をあらかじめ決めておく。その日までに、書きだしたリスト以外のものはすべて処分する。処分の仕方は経済状態や使える時間によっても変わってくるだろう。お金になりそうなものはオークションで処分してもいいし
ヤフオク http://auctions.yahoo.co.jp/

楽オク  http://auction.rakuten.co.jp/

モバオク http://www.mbok.jp/

物々交換サイトを使ってタダであげるという手もある。

ジモティ http://jmty.jp/

物々交換サイトwawawa   http://www.wawawa.jp/

古着などは程度がよければ海外の貧困地域などに送るシステムがあるので、それを利用するのもいい。古着以外のものも受け付けている。
ワールドギフト http://world--gift.com/

ただし、リミットの日までに絶対間に合わせなければならない。「ミニマリストになる日」の1週間ほど前までには処分しきれなかったものすべてを業者に処分してもらう。
便利屋!お助け本舗 http://otasuke365.com/service/fuyouhin.html

 その分量が多ければお金が余計にかかってしまうが、それは自分へのペナルティと思って諦めるしか無い。それが嫌なら、それまでの間に処分しきってしまうしかない。そのくらいの覚悟がなければ、ミニマリストにはなれない。しかし恐れる事はない。本当にミニマリストになりたいと願う人は、このプロセス自体を楽しむ事ができるだろう。ものが徐々に減っていく過程に幸福感を感じられるようなら、あなたはもうすでにプレミニマリストだ。

 

3.処分した分だけ買う。一切加えてはいけない。

 もうあなたの人生に加えるものは何もないはずだ。本は借りればいい。買うなら、読んだそばから売るなりして処分する。あなたの人生にとって本当に大事な本はそれほど多くないはずだ。それは手元において終生肌身離さず持っていればいい。ミニマリストになったその日から、何かを加える行為を一切してはならない。プラスマイナス0を常に意識する。消耗品は一つ捨てた分を補助するだけ。安いから二個買っておこうという考えも捨てる。そういうほころびから、物が増えてしまう。余計な情報のない空間は、思考を鋭敏にする。窓から見えるありふれた風景が、一枚の絵のように見えるだろう。
物がなくなってみて、いかに自分がどうでもいい物に執着していたかがわかる。物に支配されていたのか?・・・いや、物は物でしかない。単にあなたが、それに依存してただけだ。

 何もない空間はまさに白いキャンバスだ。そこであなたは、物から完全に解き放たれた人生を描いていく。さあ、新しい人生を手に入れよう。