そうだ、世界の名建築を見に行こう ぶらり旅10箇所。

 旅行のテーマはさまざまあるが、名建築を巡る旅というのも楽しいものだ。鼻息荒く「観光するぞ!」と大計画を立てサグラダ・ファミリアやピラミッドなど、超有名建造物がある観光名所を巡る旅をするのもいいが、マニアでなければ興味もないような建物を、それを見る為だけにふらっと行くなんて、最高の贅沢だろう。今回はここは見て損なしという世界の名建築をご紹介するので、「ちょっと建物見てくる」と失踪してみるのはいかがだろうか(そのことによる家庭内不和の発生にまでは責任はもてないので、各自自己責任でお願いする)地元の地下鉄などは時間帯によっては観光丸出しの大荷物を抱えていたらとても乗れない場所などもあるので、実際に行く際は綿密に計画を立てることをおすすめする。旅行の際近くを通る事があるなら、是非立ち寄ってみてほしい、10箇所ご紹介。

 

 

ビルバオ・グッゲンハイム美術館

 フランク.O.ゲーリー設計 1997年竣工。有機的な金属による曲線が異世界の城を思わせる。脱構築主義建築でもっとも壮観な建築物のひとつ、20世紀の傑作として称賛を集めた。建築家のフィリップ・ジョンソンは「我々の時代で最高の建築物」と表現、評論家のカルヴァン・トムキンスは「ザ・ニューヨーカー」で、魚の鱗を連想させてきらきらと反射するパネルについて、「チタニウムの外套をまとい、うねるような形状の、幻想的な夢の船」と表現した。 

 

 

 

 ゲートウェイ・アーチ

  この巨大なアーチはアメリカ ミズーリ州セントルイスのジェファーソン ナショナル エクスパンション メモリアルという公園内に建っている。建築家エーロ・サーリネンが、トーマス・ジェファーソンを記念し、セントルイスが西部開拓にとって重要な地であった事を想起させるべく設計し、1967 年に一般公開されて以来、米国でも指折りの観光名所である。春~夏は最上部に上がるチケットは売り切れる為、中に入りたい場合はインターネットで予約しておいたほうが無難。(2016.1.4から春まで工事によりで内部のアーチ内部のアトラクションは停止中)

 

 

 

ニテロイ現代美術館

 ブラジル リオデジャネイロ州のニテロイにある美術館。 1996年竣工。建築家のオスカー・ニーマイヤー設計のモダンな建物が特徴。竣工時89歳(!)この形は「花をイメージした」とニーマイヤー自身は語っているが、古いSFに出てくる近未来の建物のようなレトロフューチャー感が漂う。ニテロイ市民はDisco Voador(空飛ぶ円盤の意味)と呼んでいる。美術館からはグワナバラ湾の向こうにリオ市街が見える。月曜休館

 

 


ル・ランシーのノートルダム教会

 パリ郊外、ル・ランシーの街に建つ教会。建築家オーギュスト・ペレの傑作。1923年竣工。コンクリート打ち放し建築の元祖。フランク・ロイド・ライトの弟子であるアントニン・レイモンドが東京女子大学礼拝堂のモデルとした事でも有名。ペレの事務所の出身であるル・コルビュジェへの影響も大きい。※観光地でなく地元の教会なので、礼拝の邪魔にならないように。

 

 

 


テート・モダン

 イギリス・ロンドンのテムズ川畔、サウス・バンク地区にある国立の近現代美術館。テート・ブリテンなどとともに、国立美術館ネットワーク「テート」の一部をなしている。入場無料。ここは元々発電所だった建物を改造している。元のバンクサイド発電所はサー・ジャイルズ・ギルバート・スコット(ロンドンの赤い電話ボックスなどの設計で有名)の設計によるもので、99mの高さの煙突をもち、1947年と1963年の二度に分けての工事で完成した。この発電所は戦災復興の際にロンドンの電力不足を解消するために急遽建てられたものだった。役割を終えて1981年に閉鎖され最終的に取り壊しになるところだったが、折から展示スペース不足だったテート・ギャラリー(現テート・ブリテン)が現代美術館の機能を分ける為、新しい建物に移す計画を立てた際にこの発電所後に目をつけ、1994年ここを改造して再利用することが発表される。安藤忠雄なども参加したコンペの結果1995年1月にスイスの新鋭建築家コンビ、ヘルツォーク&ド・ムーロンの案が勝利し、テート・モダンとして生まれ変わる。

 

 


ポンピドゥー・センター(ジョルジュ・ポンピドゥー国立美術文化センター)

 フランス・パリ4区(セーヌ川右岸)にある総合文化施設。配管や鉄骨構造をむき出しにした露悪趣味的とも言える前衛的な外観は、完成後に市民から「いつ完成するのか」と問い合わせがあったという。関西国際空港旅客ターミナルビルを手がけたレンゾ・ピアノ氏による設計。船の先だけ切って置いたようなデザインのニュー・メトロポリス(オランダ国立科学技術博物館)、倒れかけのビルを一本の柱で支えているような、奇抜なKPNTowerなど、彼の作品は外観がすでにオブジェのようだ。

 

 


ヘイダル・アリエフ文化センター

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設計は、さまざまな問題が噴出して結果的に却下されてしまった東京オリンピックの新国立競技場当初案を作成したイギリスの建築家ザハ・ハディッド。現代建築における脱構築主義を代表する建築家の一人で、デザインが奇抜すぎてコンテストに優勝しても建築されなかったことも多く、アンビルト(実現しない建築)の女王の異名を持つ。この建物も、まるで布を建物に被せているような屋根部分をどう建設していったのか、現場はかなり苦心惨憺していそうなデザインだ。実現しなさそうなデザインだけに、実際に作られた建築物はどれもものすごいインパクトだ。コスト計算のおかしな経緯で結局彼女の新国立競技場は幻に終わってしまったが、ちょっと見たかった気もする。

 

 

 

ロンシャンの礼拝堂(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)

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 内部の様子 https://goo.gl/maps/b6q4hf3UDPP2

1955年竣工。元々ロンシャンは巡礼の地であり中世からの礼拝堂があったが、第二次世界大戦の際にナチス・ドイツの空爆で破壊された。戦後、ロンシャンの人々が再建を願い、アラン・クチュリエ神父の推薦でル・コルビュジエに設計が依頼された。
一般的なコルビジェのイメージであるモダニズム建築とは一線を画す、曲線を多用した有機的なデザイン。朴訥でまるで粘土をこねて作ったかのような、なんとも言えない佇まいだ。さまざまな形に開けられた窓から色々な形の光が礼拝堂内部に差し込んでくる内部は、ステンドグラスが醸し出すような一般的なキリスト教の礼拝堂の雰囲気とはまるで違い、とてもプリミティブな空気感が漂う。

 

 

 

チャンディーガル高等裁判所

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都市計画そのものをル・コルビュジエが手がけている、インド北部の都市チャンディーガルにある高等裁判所の建物。行政庁舎、立法議会堂など、コルビジェ設計の建造物が多数ある。その中でも高等裁判所はカラフルな巨大な柱と「ブリーズソレイユ」と呼ばれる日よけ構造が絶妙なバランスをなしている。こちらはロンシャンの礼拝堂とは違い、いかにもコルビジェという趣きだ。街全体がコルビジェの作品群の様相だが、コルビュジェ建築郡があるセクター1は政府機関が集中した地区であり、許可証がなければ脚を踏み入れられない場所だ。政情が不安定になると、立ち入り禁止措置もある。

 

 


バングラディシュ国会議事堂

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SFアニメにでも出てくる敵の要塞のようなゴツい外観がすごいインパクトのバングラディシュ国会議事堂。最後の巨匠といわれるエストニア系アメリカ人建築家で、都市計画家であるルイス・カーンの設計。現在のパキスタン・インド・バングラデシュは元々ひとつの国だったが、1947年にパキスタンが独立。ヒンドゥー教のインドからイスラム勢力が独立 する形となり、インドを挟んで2つのエリア(現パキスタンと現バングラデシュ)が地域的に離れたひとつのイスラム国家となった。しかし、離れた2つのエリアでは文化も大きく異なり、政治の主導が西パキスタン側にあった事もあり、東パキスタンで暮らすベンガル人の不満が高まる。パキス タン政府はその不満解消の為東側でも国会を開くことを1959年に決定し、計画が進められた。パキスタン政府は1962年にルイス・カーンに国会議事堂の設計を依頼、彼は現地を訪れながら設計を続けていた。工事が進む中、1971年にバングラデシュはパキスタンから独立してしまう。ここでパキスタンの第2の首都の設計から、バ ングラデシュの国政の中心地設計へと目的が変わる。ルイス・カーンは1974年に亡くなったが、亡くなる直前まで設計を続け、構想から23年を経た1982年、国会議事堂が完成した。

 

 

歴史的建造物も先人達の築いてきた人類の叡智の結晶に触れる喜びを感じることができるが、同じ時代に生きている誰かの作品としての建造物は、また別の味わいがある。圧倒的な創造性、それを作り上げる技術。すばらしい建築を見る時、私は自分がいかに凡庸かを思い知る。何かを創造する能力を与えられた人達のパワーを前にすると、正直な話、神の不公平に文句が言いたくなる。そしてあきらめがつくと、ただ目の前の建造物のすばらしさに浸ろうという気分になるのだ。自分以外の人類のすばらしさを讃えるしかないじゃないか・・・と。すばらしい誰かの、すばらしい作品に乾杯だ。