何度も挫折したジョギングを長く継続できる、4つのポイント

 健康指向の高まりとともに、スポーツを楽しむ人が増えている。私の家の近所のスポーツジムでも外のコートでテニスをする人をよく見かけるし、空き工場を改装したフットサルコートからは歓声が聞こえてくる。日曜日の小学校の体育館からは、ママさんバレーを楽しむ人達のキュッキュッという床を踏む音が聞こえ、校庭では地元の草野球チームがボールを追っている。

 私自身はと言えば、部活で卓球をやっていたが、卒業してからは温泉卓球すらしていないし、高校以降は音楽に夢中になり、社会人になってからは仕事が忙しいのを言い訳にスポーツはすっかり観戦するものになっていた。会社にいる頃は通勤があったので、それが多少の運動にはなっていたのだが、フリーになった途端ほとんど根が生えたようにイスに座りっぱなしの生活になってしまった。一度座るとトイレに行くまではモニターとにらめっこで、ピクリとも動かない。動かすのは指先と目だけ。そんな生活が何年も続いた。

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 異変は徐々に進行する。30台前半はまだ若さの余韻のようなものがあって、脳の命令に足がついていっていたのだが、半ばを過ぎた頃、ちょっとした段差につま先がひっかかるようになった。足を上げきれていないのだ。自分では十分上に引っ張り上げているつもりなのに、上がりきっておらず、階段の側面につま先が当たり、つんのめりそうになる。さすがにこれはまずいぞ・・。「老化は足から」なんていう言葉が、自分のリアルになるなど想像もしていなかった。しかもまだ30半ばだ。とりあえず思いつく足の機能を回復させる運動・・・そうだジョギングをしよう。
 私は近所のディスカウントスーパーに向かった。スポーツ用品も一通り揃っているそのスーパーで、ジャージとジョギングシューズを買った。ノーブランドの安物だ。正直続けられるかどうかその段階ではまだわからなかったので、いきなりスポーツブランドの本格的なモノを買う気にはなれなかったのだ。

 そのネガティブな予想はものの見事に的中した。

 ジョギングコースは私の居住地の市が運営している運動公園だ。一周1200メートルのジョギング・ウォーキングコースとサイクリングコースがある。そこまでは自転車で15分程度。とりあえず自転車で往復4キロ、ジョギングは当面一周をゆっくり走りながら、慣れてきたら2周、3周と増やしていくという脳内シミュレーションまでした。そこまでは完璧だった。ところかいざ走ろうと意気込んでいた日から、3日ほど天気がぐずついた。雨の中走る気にもなれず、3日が経った頃、仕事が立て込んできた事もあり、すっかりモチベーションは低下していた。買ってきたジャージはただの部屋着となっていたのだった。
 これではいけないと思い、とりあえず運動公園までむかうのだが、シティサイクル(いわゆるママチャリ)は重く、現場に着くまでに太ももが痛くなる。そして走り始めるのだが、なめていたことがすぐわかる。昔の調子で走ろうと思っても、100mも行くとガス欠のように前に行くパワーが消える。結局9割9分ウォーキングになっている。しかも本気のウォーキングの人にも抜かれる始末。これではただの散歩だ。

 この後、私は何度もやるぞと思いながら挫折を繰り返した。雨が降った、風が吹いた、なんとなくだるい。理由はいくらでも思いついた。ずるずると一ヶ月が経ち、半ば計画断念を宣言(自分に)しようとしていた時、ある出来事が私を襲った。

 いつも食料を調達しにいく近所のスーパーに、その日も普通に歩いて向かった。その段差はいつものようにそこにあった。しかし鈍りきっていた私の足はいつもの感覚より上がっていなかった。カツーンと行く手を阻む音が聞こえた瞬間私の上半身は前につんのめっていた。勢いがついて2歩3歩と足を前に出すが、もう体は半分倒れていた。ゆっくりとスローモーションのように体が地面に向かって近づく。幸いとっさに腕を出すだけの反射神経はまだあった。私は思い切り両手で地面を支え、顔がぶつかるのを阻止した。手のひらにぴりっと痛みが走る。ズザザザーとスライディングした。ご近所のおばさんが見ている前で。

 この一件のおかげで、下がっていたモチベーションは回復した。今回はかなり切迫していた。生物としてヤバイ。文明化した社会はたぶん私を飼ったまま保護してくれるだろうが、動けなくなるというのはかなりの恐怖だ。普通に動けるありがたみを感じた私は、真剣にプランを練ることにした。現状ではまだ断念してしまう可能性を潰しきれていない。何が原因か・・私はよくよく考え、その不安要素を取り除くことにしたのだった。


ジョギングを挫折しそうな人に。これさえ押さえておけば継続できる4つのポイント


1.ウェア、シューズは有名スポーツブランドのそれなりのものを一式揃える。

 私の根本的なミスは、「やめるかもしれないから安いのにしておこう」という初めの判断だった。すでにやめる口実をその時点で作っていたのだ。不退転という言葉があるが、自分を追い込んで後ずさりできないようにしておかないと、弱い人間はすぐ後ろ向きに歩き出してしまうものだ。まず自分が大好きなブランドのスポーツウェアと、シューズを思い切って買う。ここからだ。トップスポーツブランドのジョギングシャツ、ジャージ、シューズなどを一通り揃えると、結構な出費になる。「こんなにお金を使った以上、絶対やめられない」という強力なモチベーションにつながるのだ。また、スポーツ専門メーカーの製品は機能面で非常に優れているので、コストに見合うだけの価値がある。初めての人は少し気恥ずかしさを感じるかもしれない。そんなに本気でやるわけじゃないのに、アスリートが着そうなウェアに身を包まれていると、コスプレでもしている感じがする。しかしこれは毎日やっているうちにあっという間に慣れてしまう。むしろ、運動場でたまに見る普通のシャツにジーパンでウォーキングをしている人が、とても場違いな感じがしてくる。ビシっと全身クールなウェアに身を包んで颯爽と走っている初老の男性などは、本当に見習いたくなる格好よさだ。

http://japan.adidas.com/running

http://www.puma.jp/running/

http://www.nike.com/jp/ja_jp/c/running

http://www.asics.com/jp/ja-jp/running

http://www.mizuno.jp/running/

 

 シューズはなるべく専門ショップでプロにきっちり選んでもらうことをおすすめする。初心者は特に何を選んだらいいかわからない状態なのでプロのアドバイスを聞いたほうが安全だ。また店舗でカラフルな実物のシューズを見ていると、それだけで走りたい気分が高まるし、自分の足にピッタリあったものを選んでもらえるので靴そのものに愛着がわく。「こいつのためにも走ってあげたい」などと、考えるようになる。

 近くに実店舗がない場合は、以下のサイトのようなナビゲーターもあるので利用したい。実店舗がベストだが、適当に選ぶよりは、自分の足に合うものを知ってからのほうが遥かに安全だ。

MIZUNO PRECISION FIT
http://www.myprecisionfit.com/test/welcome?lang=ja&noAnswerSelected=&noMobile=#

ADIDAS ランニングシューズチャート
http://shop.adidas.jp/running/chart/#.VoidYVKMnW0

 


2.気持ちがいい という原則を外さない。

 冬の寒風吹きすさぶ中で苦痛に顔を歪めながら走っている人がいるが、よほどストイックな人でないかぎり、冬のど真ん中から始めると確実に挫折する。今年の冬は暖冬傾向のようなので、例年よりは始めやすいかもしれない。春から始めるのは比較的いいが、6月くらいから蒸し暑さがひどくなるので、挫折する可能性が上がる。夏に自信のある人は、春からでもいい。初心者が比較的継続しやすいのは秋涼しくなり始めの頃だ。空が高くて走っていて気持ちがいいし、まだ十分夏のウェアでいける。夏仕様のウェアに気温の低下にあわせて徐々に一枚ずつ羽織っていく感じで、自分の体感にあわせて着るものを調節できる。これならいきなりではなく、冬の最も寒い時にも自然ときっちりと合ったウェアになっているので、快適にジョギングできるのだ。最も寒い1月~2月は、吸湿発熱素材の肌着を着用する人が多いと思うが、種類によってはあまり効果がないという話も聞く。もこもこしないので私も利用しているが、運動し始めの体温が低い状態では普通の肌着より温かい感じがするが、何周も走って体温が上がると、体自体の熱で十分温かくなっている。むしろジョギングで発汗した後自転車で家に戻る時、首周りなどから風が入らないように気をつけている。冬から春にかけては、逆に徐々に春仕様のウェアに変えていく。これで一年中快適にジョギングできるというわけだ。ただし、夏場の昼間は極力避けよう。朝夕でも水分と塩分には十分注意しなければならない。慣れてきて少し速く走れるようになっていても、夏場は70%程度にパワーを落とし、慎重に走ることを心がけるべきだ。ブラックアウトして、気がついたらこの世にいない・・なんてことになったら本末転倒だ。


3.運動場まで移動がある場合は、スポーツ自転車がおすすめ

 ママチャリで快適に移動できる距離は短い。最近は変速機のついたものもあるが、車体重量が15キロもあると、それを人力で移動させているわけだから結構な運動量になる。まあエクササイズとして負荷の強いママチャリは正解なのかもしれないが、私のように心の弱い人間だと、この時点で疲れてしまいモチベーション維持が困難になるのだ。それから、見た目の問題も大きい。せっかく全身スポーツブランドのカッコいいウェアでキメているのに、ママチャリで移動では虚しい。今は自転車ブームで、かなり安価で「クロスバイク」という変速機付きの自転車が出ているので、もし運動場まで結構な距離がある人は、一緒に購入することをおすすめする。
 ただしこの手の自転車を購入するのは、自転車専門店で。地元の小さな自転車屋でも、店頭にそういう自転車が並んでいる所ならOK。とにかく何も知らない状態なら、
プロに全部揃えてもらうのがベストだ。当然予算があると思うので、先に基本的な用途と、トータルマックスいくらでと伝えておけば、無理に高いものは勧められないから大丈夫だ。通販などで異常に安いクロスバイクが売られていたりするが、品質が信用できず非常に危険だ。かなりの速度が出るから、自分以外も事故に巻き込む可能性がある。きちんと名の通ったメーカーでも最近は初心者向けの安いクロスバイクを出しているので、そのへんを狙うのがいい。私自身、最安価格帯の(3万クラス)ものだが、初めて乗った時の気持ちよさは今でも憶えている。運動場まで行く道までも楽しくなるので、おすすめだ。

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あさひ WEEKENDBIKES 29,980円

 

4.まずはウォーキングから

 これも自分の失敗でわかったことなのだが、基礎体力がほとんどない状態で走れるわけがない。当たり前のことなのに、過去の自分が今に直結しているような気分でいきなりジョグを始めても、あっという間に息切れしてやる気を失ってしまう。自分より10も20も上の人がびっくりするような速度で走ってたりするが、そういうのを見て負けてられるかとムキになるのが一番危険だ。まずはウォーキングで歩く気持ちよさを十分味わっておくのがいい。大原則だが、歩く前に足首周り、太もも裏、ふくらはぎなどを十分伸ばしておかないと、怪我に繋がる。歩いた後もストレッチをきちんとしておく。やらないと翌日に疲れが残る。とにかく気持ちいいことをしに来ているという前提を忘れてはいけない。自分の体調、体力に合わせて、1週間~2週間ウォーキングをする。徐々に慣れてきたら、ウォーキングにジョギングを混ぜていく。私の場合は100m軽くジョグをして、100m歩くというのを1週間くらい続け、慣れてきたのを感じたら、200m軽くジョグ、100m歩くというように、徐々に歩く部分を少なくしていった。私が使っているコースは1200mで一周なので、200mジョグ、100mウォークのパターンだと、4セットで一周になる。ジョグ部分を増やすとタイムが徐々に上がるので、それ自体が嬉しくなってモチベーションアップにもつながる。
 できれば毎日の記録が取れるジョギング用のウォッチも用意したい。スマホのアプリにもあるが、結構かさばりウェストポーチから出し入れしなければならないし、ウエストポーチ自体が上下に揺れて結構鬱陶しいので、できれば時計タイプのものがいい。

 

 徐々にジョギングを増やすペースが1週間では早いと感じたら、それぞれを2週間としてもいい。それは本人の体との相談だ。私の場合だと、600m+100mくらいの組み合わせになった頃には、もう100mのウォーキングを挟む必要がなくなった。
ジョギングができるようになると、次はタイムを上げたくなる。不思議なもので、あれだけやる気のなかった自分が気がつけば1秒速くゴールできることに喜びを見出すようになっているのだ。ただ、これも無理は禁物。まだ走る事に体が順応しておらず、適切な筋トレもしていなかった私は、初心者が必ずなるという、シンスプリントというすねの痛みに襲われた。これは路面の硬さを、鍛えられていない筋肉が受け止めきれていないことや、きちんとしたフォームで走ることができていないためにすねに負荷がかかって起きる症状で、ジョギングに慣れ始めた初心者によく起こる。シューズの底が薄いことによっても発生するので、やはりシューズ選びは特に気をつけたい。スポーツメーカーが出している初心者ジョギング用の靴なら、クッションもよく大抵は問題ない。
 シンスプリントはひどいと歩くのもつらいほどになるので、しばらくはジョギングどころではなくなる。軽度であれば1〜2週間で回復するので、1週間程度は休み、様子を見ながら、まだ痛むようならウォーキングをしばらくして、徐々に走り始めるようにしよう。2の「気持ちがいいという原則を外さない」に当てはまらないようなジョギングをやっても意味がないので、ダメな時は思い切って休もう。

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 以上の4つのポイントを抑えた私は、3年ほど経過した今も楽しくジョギングを続けている。つらくなったら歩くし、暑すぎる、北風が強すぎると思ったらやめておく。あくまで「気持ちよく外で動く」という原則でやっていれば、そもそもやめる理由がなくなる。小鳥のさえずりや、季節の空気感を楽しみながら、楽しくジョギングをしてみてほしい。まちがいなく、生活にちょっとした起伏が生まれ、一日がより充実したものになっているだろう。はまれば、さらにマラソン大会出場など、次のステップも見えてくるかもしれない。さあ、ジョギングを楽しもう。